町会福祉アンケート結果概要

1 町会福祉の捉え方

本調査において町会福祉とは、図1に示すとおり「町会程度の身近な生活圏・自治圏を範囲として、地域の住民が主体となり行政と協働して展開する地域づくり」であり、町会組織の行なう活動だけでなく、町会の地理的、人的ネットワークを基盤にした町会の住民によるあらゆる活動を含むものとする。これまで、町会福祉といえば、町会組織が実施する活動として捉えられがちであったが、ここではより広範な活動を含む。
すなわち、図1に示される、町会組織と近隣社会(まち)の両方を含む概念であり、これまで敬老会や新年会などの行事が中心の非日常的な活動のみならず、町内の環境整備や日頃の助け合いなどの日常的な活動をも含む概念である。

図1 町会福祉の概念

町会福祉の概念

2 歴史的な近隣社会の機能の変化と町内会・自治会の形骸化

町内会・自治会の歴史を振り返ると、第二次世界大戦以前では、町内会・自治会は、「むら」や「まち」として、生産及び生活の場、相互扶助の場であった近隣社会そのものであった。特に農村社会においては、農作業やむらの共同作業など生産活動において、重要な役割を果たしていた。
しかしこのような重要な役割が、戦後の高度成長、近代化の中で大きく変化していく。資本主義経済が深化していく中で、賃金労働は「むら」や「まち」の外部にあって、住民は「外で稼いでくる」という生活スタイルが一般化し、「むら」や「まち」から生産の場が喪失していった。同時に、労働の対価として得られる「お金」によって、それまで「むら」や「まち」の内部、具体的には近隣社会の相互扶助で解決してきた様々な生活上のニーズを個人的に充たすことが可能となった。例えば、かつては地域の公民館や集会場でおこなった葬式も、セレモニーセンターで行なったり、除雪や山の手入れも業者に依頼するなど、「むら」や「まち」の助け合いから、個人の負担によるサービスの利用へと変化してきた。さらに行政の機能が強化され整備されていくなかで、近隣社会が担ってきた共同の機能も小さくなってきた。その結果、一人ひとりの住民は個別化し、「むら」や「まち」などの近隣社会はそれまでの機能を失い、その住民組織である町内会・自治会は形骸化が進んだのである。
しかし、このような町内会・自治会が再び見直されたのは、1990年代に深刻となった行政の財政問題からである。国のレベルでは1970年代から、コミュニティ政策などによって近隣社会は上からの再生が図られたものの、生活スタイルの変化がますます進む中で、現実には近隣社会の役割はむしろ縮小された。しかし、近年の介護保険の導入や地方分権・住民参加、経済構造の変動などで、これまでの社会システムや個人の生活スタイルは大きく揺らいでいる。経済の構造的な行き詰まりの結果、これまでの生活スタイルを支えてきた個人の経済力が不安定になってきたことに加え、行政が財政面で逼迫しこれまでの公共サービスを維持することが困難になったことから、再び近隣社会が脚光を浴びることとなった。
ところが、近隣社会に対する個々の住民の意識は、依然として消極的である。それは、個人主義が定着し、かつての個人の自由を制約するような近隣社会に対しては、強い拒否感があることに加え、形骸化してきた町内会・自治会が本来の住民自治組織としての機能を十分に果たしていないことにある。例えば、今回の調査においても指摘があったが、行政が公共事業を進めるために、旧来の手法として形式的な地元合意を根拠とするが、その当事者としての町内会・自治会がしばしば使われる、あるいは選挙活動への強制的な参加など、町内会・自治会が本来の住民自治の組織としての信頼を失いかねない事態がこれまであったことなど、住民の町内会・自治会に対する視線は依然として厳しいものがある。
したがって、町会福祉を考えるうえで、町会の現在の課題や問題点を明確したうえで住民に受容される町会の今後のあり方を提起することが重要である。

3 町会福祉実態調査の概要

3.1 調査の概要

今回の町会福祉の調査は、福祉ひろば運営協議会において基本的な方向性を議論したうえで、具体的な調査については協議会委員に福祉ひろば職員、有識者などを加えたプロジェクトチームが実施した。(プロジェクトチームの構成は別紙)
調査は、①町会における予備的な調査、②聞き取り調査、③町会を対象としたアンケート調査によって実施されたが、随時、福祉ひろば運営協議会、プロジェクトチームの会議において方法、内容などについて議論しつつ進めた。また、平成12年11月から始まった市民公開講座「地域福祉のまちづくり」における一連の調査活動、講座における議論も踏まえて調査を実施した。

調査の当初における問題意識は以下の通りである。

・町会福祉を推進するという前提にこだわらず、町会福祉の現状や課題について明らかにし、町会福祉の是非も含めて検討する
・町会福祉を町会の組織による福祉活動と限定せず町会を範囲にした多様な活動としてとらえる
・町会における個々の活動だけでなく、公民館や各種団体、女性など様々な担い手による身近な地域づくり、福祉づくりについて考える
・町会でできること、できないことを明確にする
・特に福祉ひろばを起点にした町会における地域福祉のあり方を考える

調査はまず予備調査を行ない、聞き取り調査やアンケート調査で明らかにすべき項目についてその妥当性を検討することとした。予備調査として、里山辺地区新井町会の福祉ネットワーク、城北地区蟻ヶ崎東町会の結いの会、島立地区永田町会のキャンドルの会、鎌田地区鎌田町会の見守り安心ネットワークについて、①活動の内容、②リーダーの有無、③活動が始まるまでの経緯、④協力体制、⑤周知方法と浸透度、⑥成果と課題の各項目について聞き取り調査を行なった。(別紙参照)

予備調査の結果から、当初の想定通り、町会の福祉に関わる活動を中心とするのではなく、むしろ町会全体について議論を行なうことが重要であるとの示唆が得られた。したがって、予備調査の成果を踏まえて、さらに地域特性や地理的バランスを考え、5つの町会を対象にした聞き取り調査を実施した。聞き取り調査では、福祉活動に限定せず町会の活動全般について調査した上で、町会の問題や課題について重点的に聞き取りをおこなった。対象となった町会は以下の通りである。
・第一地区 伊勢町町会
・白板地区 宮渕東町会
・庄内地区 出川町会
・芳川地区 芳川野溝町会
・入山辺地区 橋倉町会

聞き取り調査の成果及び市民公開講座における議論を踏まえて、プロジェクトチームによって町会福祉の課題の整理をおこない、それにもとづいて町会の実態をより性格に把握するためにアンケート調査を実施した。調査は調査票を市内全町会に配布し、町会長に記入を依頼した。配布数及び回収状況は次の通りである。

配布数 378
回収数 316
回収率 83.6%
配布日 平成13年2月1日
回収日 平成13年2月26日

具体的な質問内容は次の通りである。
① 町会長の任期 任期・年数
② 町会長として最も大事にしたいと思うこと 記述
③ 町会長の活動にかかわる現状
1) 隣組の悩みや問題が町会運営に反映される工夫と仕組み 記述
2) 隣組の具体的な活動について 項目選択
3) 女性の参画について 項目選択
4) 公民館関係者の町会役員としての位置づけ 記述
④ 町会福祉を進める上での課題
1) 町会の特徴 記述
2) 町会の抱える問題と課題 記述
3) 特に力を入れている町会の活動 記述
4) まちづくりの上で大切にしていること 記述
⑤ 町会の活動について
1) 町会の福祉に関わる活動 記述
2) 町内の自主的な活動への財政支援や場所の提供などの支援 記述
⑥ まちづくりや町会福祉についての悩みや意見 記述

4 町会の実態と課題

実態調査から明らかになった町会の実態と問題点は次の通りである。

①町会における福祉づくり

町会はそれぞれ町会の福祉づくりに取り組んでおり、実践のなかから様々な問題に直面している。アンケート調査では、町会長にとって大切なことは、「町内の和合、協調」が多く「高齢化への対応」「生活課題の解決」などが続いている。また町会の民主的な運営や情報の共有などの意識も高まりつつある。

②町会の現状

住民のニーズが多様化してひとつのこと(価値観)ではまとまらないことが指摘されており、また 町会の役員のなり手がいない町会が多く、また役員の任期が短かすぎて活動の継続性がない、あるいは役員不足でいったん引受けるとやめられない、多忙などの問題がある。さらに、若者、男性、転入住民、アパート、外国人など不十分な参加とトラブルも多い。女性の参画は進んではいるがまだまだ不十分である。

③町会の多様性

町会は個性があるのできめ細かく考えていかなければいけないことが調査から明らかになった。特に一般的な福祉活動ではなく日頃の町づくりや町会の課題から考えた町会のニーズに対応した活動が求められている。したがって、見守り安心ネットワークのような上から網をかけるような形には拒否感があり、動員型のボランティアへの危惧も強い。さらに人口増、高齢化、ゴミ問題、子どもの問題、危機管理、交通(移動手段)などの新しい課題がある。

④行政との関係

町会福祉において、行政が従来のような上から町会に動員をかけるようなやり方はやめてほしいとの意見が多く、縦割り・トップダウンなどによって行政との関係が町会の活動を阻害しているとの指摘がある。市の配布物の見直し、行政から依頼の役員の見直し(会議漬けの改善)などが要望されている。

⑤現代的な課題
人間関係やプライバシーと町会の活動の関係について苦慮しており、またどこまで町会が手を出すのかについては、町会への依存を防ぐ上からも課題であるが、身近であるからこそ難しいとの指摘がある。

以上を整理すると町会福祉に関わる課題は以下の4点に要約できる。

①町会における重要課題としての町会福祉

地域福祉がコミュニティの中心課題となっており、町会における重要課題として町会福祉が位置付けられる。また高齢化とともに地域福祉の課題自体も多様化し、町会におけるニーズもより広い範囲に及んでいる。

②町会の意義やあり方の見直し

町会福祉を考える前提としての町会の意義やあり方の見直しが必要とされている。例えば、地域福祉を進めるためには町会が十分な条件を備えていないことが指摘されており、組織化や体制の問題に加え、女性の参画や町会の民主的な運営、情報の共有など町会が住民の自主的で自立的な自治組織となっているかという観点から、町会の目的や機能の改革の必要性が指摘されている。

③多様化する住民の意識と町会組織の限界

住民意識の多様化に伴い、町会がすべて対応することは困難であり、町会福祉を考えるうえでは行政との連携、NPO等の参画が求められている。例えば、住民のニーズが多様化してひとつのことではまとまらない町会の実態が明らかになっており、従来の上意下達による動員型の町会運営では住民の理解を得られない一方で、住民のニーズの多様化に町会の活動が対応することが難しいことも指摘されている。また、人間関係やプライバシーと町会の活動の関係について多くの町会で苦慮している。

5 町会福祉への提言

①学習型地域づくりに向けての公民館を通じた支援

町会福祉の目的意識の明確化を図るために、地区公民館や町内公民館での地域づくり学習などの学習が必要である。町会福祉の目的について共有されることが重要であり、現状では公民館との連携・分担があまりはっきりしておらず、拠点がないところもあって、地区公民館と地区福祉ひろばの連携による町会の支援が必要である。

②隣組機能の見直し

身近な問題を解決しながら町会への参加意識を高めるという観点から、隣組の機能の見直しが重要である。ゴミの問題や介護などがきっかけとなって、隣組単位の活動は重視されつつあり、拡大する傾向にあるが、自然な町会福祉のあり方として隣組単位の活動が重要である。人間関係やプライバシーについてもより自然に対応ができると考えられる。

③行政の役割の明確化と協働

町会福祉を実効あるものにするためには、地区単位における公的基盤整備の充実による高齢者になっても住むことのできる地域づくりが求められている。地区型の在宅介護支援センターやグループホームなど、町会では対応が不可能な緊急あるいは専門的なケアなど、町会からより身近な場における公的基盤整備の充実への期待が強く、町会福祉が公的な基盤に支えられることで高齢者になっても住むことのできる地域づくりが可能になることが指摘されている。また町会の主体性を損なわない支援が必要である。さらに町会の枠にとらわれずに、柔軟に町会の福祉づくりを進めるために、社協も含めてNPOとの連携が必要となる。

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